2021.5.25 |
シリーズ・鎌倉R不動産が考える“鎌倉らしい風景とは”【2】 「現れた黒梁!本物が目を覚ます」小松 啓(鎌倉R不動産) 鎌倉市坂ノ下の古い一軒家を改装しながら、「鎌倉らしさとは何か?」について考える連載の第2回。いよいよ改修スタートです。 コラムの第1回はこちら 新建材はできるだけ取り払う 鎌倉の風景をつくるべく、始まった改修工事。そのための方法として、まずは取り払うべきものの選定からはじめます。現在の風景で気になるところはアルミ製のフェンス。時代の変化とともに、丈夫で安心安全な素材として選ばれたこの建材ですが、どうもこの坂ノ下の風景にはマッチしていないなと感じていました。(写真[1],[2],[3]) どこか閉鎖的で冷んやりとした印象のアルミ建材。これは内部の縁側から庭を見ても気になります。通りを行き交う人の声は聞こえるのに、人が見えることはない違和感。せめてもう少しだけ人通りを目でも感じることができる生活をしても良いのではないだろうか。 アルミに限らず、素材については新建材(※)とよばれるモノをできるだけ取り払うことで、鎌倉らしさを取り戻すことに近づくのではないかと考えるようになっていきます。そう考えると、雨樋も便利だけど、なんかいつもカッコよくないとう議論が出る材料でして、せっかくなのでこれも新しい挑戦をしてみたくなったので一部外してみます。(写真[4]) ※新建材……新素材や新製法を用い、従来のものと同等の機能や外観を持つように作られた人工建材のこと。 素材ももちろんですが、外構の意匠については鎌倉らしさの象徴となるので、アルミを取った後をどうするのか時間が許される限り、最後まで粘りたい。その間の仮囲いとして、改装期間中には自然素材の「ジュート」を使用してぐるりと囲んでみました。このジュートという素材は農作業で使うもので、袋にすれば麻袋になる素材です。少し透けて見えるこの程度の囲いで「見る・見られる」の関係をさぐりながら、工事に着手してみます。(写真[5],[6]) そして室内へ。新建材といえば室内で使われる部材の方が多く、プラスチックやビニール、プリントされた化粧板などたくさんの新建材が住まいの変化と共にこの家にも次々と導入されていました。その中でも、はじめから気になっていたのは電気配線の延長に伴って取り付けられた配線モール(写真[7]参照)。せっかくの和室のきれいな柱もど真ん中にこれがくると気になります。きっと家具があればそこまで違和感はなかったのかもしれませんが、こうして空っぽにしてしまうと目立つのです。カーテンがなくなればカーテンレールも気になります(写真[8])。 柱や梁に「洗い」をかける こうして柱や梁にまとわりついたモノが取れると、せっかくなので、柱を磨いてみたいという衝動に駆られたのです。そう、柱や梁に対して、灰汁など使って木肌の汚れを落とす、「洗い」をかけてみたい。この「洗い」という仕事は奥が深く、日本の木造建築における美意識がうかがえる仕事です。以前から興味はあったものの、そこまで劇的な見た目の変化が得られるかどうかわからないことがあるため、機会に恵まれなかったのですが、今回のご縁に思い切って洗いにチャレンジすることで、譲り受けたこの家へ感謝の気持ちを表したいと思ったのです。 新建材はできるだけ取り払う。そして洗いをかける。このふたつをデザインコードにする。そんな決断をしたからかどうかは分かりませんが、天からのプレゼントはその後突然にやってきたのです。 こんなに綺麗な小屋組をみせられたら、カッコよくするしかないじゃないですか。神様ありがとう、これで工事金額UP間違いなしだぜ。 |
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