2011.4.17 |
Panic syndrome藤井健之 渋の湯にある駐車場には白いプリウスが一台だけ停まっていた。そもそも今日は平日で昨日は長野県でも地震があった。最初の取り付きでアックスを2本ザックの上に括りつけて下山中の登山者一人とすれ違ったのが人と会った最後だった。 稜線を一歩一歩アイゼンの効きを確認しながら登っていく、左手には大きく成長した雪庇が崖上に張り出していて、そちらへ近づかないよう右よりにルートを取った。高く壁のように見える急斜面では息を切らしながら、高度感への不安を頭から振り払いながら登り続ける、振り返ると気が遠くなりそうだから下は見ない。コツは斜度と雪質を判断しながらアイゼン、ピッケルによる確保を確実にして、不安を合理的に排除していくことだ。足元に固定された爪がしっかりと固い雪の層に突き刺さっている、右足、左足それぞれが。そしてピッケルの先端も同様だ。つまり仮に垂直の壁だったとしても落っこちることはない。 頂上で猛烈な強風の中でタバコに火をける、いつもの習慣だ。空を見上げると航空機が白い線を描きながら飛んでいた。青と白二色の世界に僕はいる、開放された気持ちになった。 |
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