哀愁の中の美しさ

R不動産を見てくださっている皆さまだったら、新しくてツルツルピカピカの部屋よりも、少し年季が入り哀愁が漂っている方が好きです、という方が多いのではないかと思います。僕もそのひとりです。ただ、古ければいいというのでもないのが難しいところなんですが、この物件はまさに哀愁漂う系の物件です。

鎌倉R不動産ではお馴染みのヴィンテージマンション、湘南ハイム。過去の事例「湘南の物語は続く」や、現在も募集中の「新たに始まる湘南の物語」は、外壁のアールが美しいメゾネットタイプのT棟。今回紹介するのはT棟の向かいに建つ4階建FE棟の最上階です。

建物はエレベーター無しで片廊下型と階段室型がミックスしたような造りになっています。一般的なカマボコ型の団地とは一味違うのがまたいいですね。募集区画には南東と北西に窓があり、南東側からは地続きに江ノ島が、北西側からは丹沢山地が望めます。

入った瞬間に感じる哀愁感は、どうやら部屋のディテールから来ているようです。

たとえば、リビング一面に敷かれたくすんだアイボリーのカーペットは毛足がやや長く、以前の住人が配置していたであろうテーブルやソファの足跡が残っています。ここはやり替えるにしても、人気の無垢フローリングではなく同じ色味のカーペットがしっくりくるんだろうなぁと思います。足触りのいいサイザル麻も相性は良いかと。

よくよく見ると、ルーバーの折れ戸や巾木、キッチンスペースのフローリング、カーテンボックス、キッチンの取手や縁部分までがほぼ同じテイストの濃い茶色で統一されています。このリビングには濃い色合いのヴィンテージ家具を置きたい。そしてよく日の当たる窓辺ではウンベラータやエバーフレッシュなどの観葉植物を育てたい。

一方、リビングとは反対に位置する2つの洋室は天井が正方形の目透かし天井になっています。おそらく、こちらは建築当時に近い状態かもしれません。開き戸と引き戸が上下に組み合わさった収納も今はあまり見かけませんが、普段使いの物は下、季節物は上という使い分けができ、一周回ってモダンにさえ感じます。

最後にこの物件で個人的に一番好きなキッチンについて。メーカーは分かりませんが、最近のモノではないこと、そして丁寧に使われてきたんだろうことはわかります。扉の端や角が丸みを帯びた可愛いフォルムに吊り戸棚と食器収納の見事なバランス。民藝の食器を並べたくなるガラス戸の収納も良いアクセントになっています。一部テイストが違う箇所はあるものの、料理が楽しくなりそうな素敵なキッチンでした。

細かい部分を書き連ねてしまいましたが、ただキレイに改修したのでも、ただ古いのでもないこの部屋の雰囲気を皆さんにお伝えしたかった。この感じ伝わりますでしょうか？