2階のバルコニーからの眺め 鎌倉市内の山に近いエリアは入り組んだ地形になっています。地図をにらめっこしていても、周辺の山の感じや高さの関係が想像できないほど複雑です。これこそが「魔界」の正体なのです。つまり魔界とは山に囲まれた谷戸にあるため、電波が安定しないエリアのことを言います。都心から移住をお考えのお客様はネックに感じる部分かもしれませんが、今回のお客様はいとも簡単にこの事実を受け入れていました。さすが地元育ち!と私はこっそり思っていたのでした。
既にケーブルテレビをご利用ですし、電話は携帯会社を変えれば問題ないらしい、という情報もご存知なご主人様のアドバイスで奥様もすんなり納得のご様子。これも鎌倉の住まい方なのだと、私が教わった気がしています。あっぱれです。当然、山側ですので坂道もあるのですが、坂はハードルとさえ感じておらず、問題なし。私も内見の際は自転車で現地に向かうことの方が多かったりします。ある程度の坂は余裕です。
なにせ、その分緑たっぷりの眺めが得られるのですから、天秤にかければ納得の行くところだったのだと思います。ちょっと天気がよくないですが、上の写真は改装前に撮影した2階のバルコニーからの眺望です。写真をよく見ると足元の緑は物件敷地内の庭木です。この庭木と遠くに見える山々のバランス、そしてなおかつ海までも自転車で行ける距離。なにより住み慣れたエリア。見える山は小・中学校時代に探検して遊んだ山です。これらがプラス評価になったのだと思います。
しかし、いいところだけではありません。この物件は庭が広い代わりに、駐車場が敷地内になく、道路との境はほとんどが斜面になっているため、庭を一部潰して駐車場を作ることはむずかしい物件でした。駅までは自転車であればそれほど問題ないものの、車ニーズはある距離です。なによりお客様も車での通勤もされる方でした。
このことが他の物件に比べ価格が魅力的な理由だったのです。駐車場がネックとなり諦めた方もいたのではないかと想像されます。今回のお客様は、この問題を地元育ちのネットワークで近隣に月極駐車場を確保することで、見事にクリアされたのでした。
こうしてこの物件を気に入っていただき、いざ改装のイメージについて話が進み、今回改装のお手伝いいただいた石田組さんが登場します。石田組さんは地元、鎌倉市腰越に事務所を構える施工会社さんです。お客様は今回、改装費用も住宅購入と合わせた住宅ローンを組むため、おおよその予算組みを購入と同時に掴んでおく必要があるので、建物を診てもらいつつ、お客様のご要望を伺うことになりました。
前回のブログでも書いた通り、お客様は作り込んだ完成度の高い改装を求めるのではなく、身の丈に合う、今出来る範囲の改装をしつつ、自分たちでも改装を楽しみたいというご要望でしたので、やりすぎない改装を目指す方針になりました。
とは言え、せっかく改装するのであれば、あれもこれもやりたいという気持ちと、当然カッコいいものが欲しいし、モノへのこだわりもある。しかし、ここで話を不動産売買に戻すと、中古住宅の売買は一般的に、気に入った物件がみつかってから契約までの間がとても短いのです。なぜならば、その間に他に購入希望者が現れてしまう可能性があるからです。こうした詰まった状況になると、どういう訳か検討者が重なる傾向にあります。これは不動産屋さんも不思議なくらいで、しばらく動きがなかった物件ですら、購入検討者が一人現れると同時期に複数の検討者が急に現れることもしばしばあります。
こうなった場合、改装せずに更地にして新築する計画の方で即現金で購入するという方が現れてしますと、売主さんが待ちきれず、その方でさらっとお話が進んでしまう可能性があります。せっかく気に入っていただいた物件ですので、私たちとしてはそんな思いはして欲しくないのです。
そのため、ここから売買契約まではスピード感が求められます。改装の打合せでは諸々ご希望は伺いつつも、まずは現在の予算から、どうしてもやりたい部分と後回しにする部分をはっきりとするように考えました。結果、潔く1階部分の改装をしようということになりました。(結果としては2階も少し改装しました。)
こうして総予算の枠組みが決まり、資金計画を立て、住宅ローンの事前審査を申請し、親御様にも現地をご覧いただき、同時に購入申込ということとなり、そこからは一気に売買契約まで駆け抜けるのでした。仕事がとても多忙なお客様には相当ハードなスケジュールになったのではないかと思っているので、近々、一緒にご飯を食べながらその辺りのお話を伺ってみようかと企んでいます。(続く)
改装前の1階リビング