2009.1.21 |
GARDENER藤井健之 鎌倉山でまた開発が始まるらしい。造園屋のユウが教えてくれた。場所は山から七里ガ浜へ抜ける一方通行の道が始まるあたりを東へ折れた突き当たりだとのこと。「やべぇよ、あそこは」ユウが言った。どうやら昔から幾度も建築や開発の計画が持ち上がるのだが、何らかの超自然的な理由でいつも頓挫してしまう土地だという。こういう話しは少々違和感を覚えながらもそのまま会話が成立してしまうところが面白い。そして、多くの建築に携わる人たちに聞くと、大抵ひとつやふたつこの種の体験談を話してくれる。 土地の前には看板が立っていた。有名な会社が開発を行うようだ。規模は想像を超えていた。山から七里ガ浜に至る道路を一本通して、その周囲に住宅用地を造成する、つまり山がひとつ消滅する。七里ガ浜の住宅地は前面に海、後ろに山が売りなのだが、実際、背景がかなり寂しくなってきている。つまりこの山は住宅地にとってとても残り少ない希少な緑の借景なのだ。 さて、えらいことだと、ユウと相談した。そして「やべぇ」場所として怨念系でいくしかない、と二人で決定した。もちろん酔っぱらっていた。ガーデナーには石工の知り合いは多そうだったので、ともかく墓石と道祖神のような石像系で、古い磨耗した文字が彫られたもの、且つ経年劣化処理が施されたものを作ってもらうことにした。もちろん埋めるためだ。会社ではなく現場作業者の情念に訴える方法を取ろうとしたのだ。もともとユウが知っている位なので地元では「あそこは・・・」といったオカルトな話題豊富な場所だ。 ともかく酔いがさめて僕とユウは犯罪者にならずに済んだ。グーグルアースを見ると都心に森は南西部のこのあたりにしかない、緑の宝石のようにも見える。それを守ろうと叫ぶのではなく、昭和30年代生まれの僕は祖父や祖母に代わって、「ここはやべぇぞ」と囁こうと思った、森のことについて。 |
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