2009.2.24 |
virus藤井健之 「海見たい病」は湘南では常に流行している。最初からこの病気に罹っている人も入れば、こちらに住んでから患ってしまう人も入る。テレビや雑誌でリビングやバスルームから海一望なんて部屋がよく取り上げられたり、実際にそうした海眺望ハウスに住んでいる知り合いが出来てしまったりする。それが、海見たいウィルスとの最初の接触だ。 時間が経過するにつれてこのウィルスは頭の中でだんだんと増殖を始め、想像力が日に日に逞しくなってくる。自宅のバルコニーやリビングの窓の先に幻影が見えてくる。隣地の微妙なサイディングの外壁ではなくて、ダイナミックな青い水平線のビジュアルが・・・。せっかく海まで数百メートルの場所に住みながら、なぜ海が見えないんだ!と、心の中の渇望が極限に近づいていく。海が見たい、部屋から。こうなると完全に病気だ。それもかなり性質の悪い。 最初の一ヶ月位は仕事帰り籐の椅子に腰掛け、ビール片手に外を眺めていた記憶がある、ただその後バルコニーに出た思い出はあまりない、日本から友達が来たときくらいだろうか。湘南でも海見えマンションに住んだ、しかしここのバルコニーに出た回数は、熱帯の都市国家にいたころよりもっと少なかったと思う。 情報だらけの世の中で僕たちはいろいろな選択肢に気付く機会が増えた。そしていつも何かを求め続けている。仮にひとつひとつすべて体験できたとして、病気を乗り越えられた先にたどり着く場所はどこなのだろう? |
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