色彩の冒険

海辺の街には、カラフルな建物が似合います。眩しい日差しが色彩を際立たせ、深い影を刻むからでしょうか。

江ノ電の七里ヶ浜駅から線路に沿って歩くこと2分。さらには海までも徒歩3分という場所に立つ小さな集合住宅。江ノ電側から見ると不愛想な佇まいですが、海側から見ると1階部分はオレンジイエロー、2階以上はブルーという攻めたカラーリング。建築に色を多用したメキシコの建築家、ルイス・バラガンをふと思いだしました。

かと言って、周辺の風景から浮いているわけでもなく、隣はピンクだったりイエローだったり。砂浜にカラフルなパラソルが開いていくかのように、海街のわくわくと浮足立つような空気感を演出してくれます。

そして驚くのは、玄関ドアを開けた瞬間。なんと鮮やかなターコイズブルー！ちょっと目に痛いくらいですが、その振り切った感じ、嫌いじゃありません。

白の建具や巾木が空間をぴしっと引き締め、上品な印象にしています。某ジュエリーブランドを連想しましたが、やっぱりこの2色は相性がいい組合せですね。余談ですが、この部屋、以前は黄色い部屋だったようで、カラフル好きな住人が住み継いでいると思うと、なんだか楽しいです。

プランはこれ以上ないくらいシンプルな1Kで、ミニマムなキッチンにはガスコンロ1口と造り付けの小型冷蔵庫。風呂、トイレ、洗面はビジネスホテルで見るような三点ユニットなので、その辺りは割り切っていただければ。道を挟んで江ノ電の線路なので、電車通過時には窓を閉めていてもなんとなく音と振動を感じました。

海まで3分という立地なので、思い立ったら即、海に向かえるのが魅力。1階のテラスは共用なので、住民がボードを洗ったり置いたりする場所になっています。この区画からはテラスに直接出られるので、出入りしやすいのもいいですね。

広さや水まわりの簡素さを思えば、セカンドハウス利用が順当と思いつつも、思い切ってここに腰を据えてみて、海と街も自分の部屋ととらえる、なんて住み方にも憧れます。

そろそろ築30年で海風に吹かれての経年劣化もあり、全体的にジャンクな感じが漂っていますが、逆にそれがかっこいい。この夏、冒険の一歩を踏み出したい方に、ぜひ。