谷戸の息遣い

鎌倉駅から十二所に向かって金沢街道を進んでいくと、街の賑わいが少しずつ背中の方へ遠のいていきます。代わりに広がってくるのは、木々の緑と、山に沿う家並みです。商店はまばらになりますが、人の暮らしの気配は途切れることなく続いています。

十二所は、山に囲まれた谷戸が広がる地形が特徴です。聴こえてくる鳥の囀りや風に揺れる葉擦れの音に包まれて、車の通れない路地の奥に５SLDK、183.30㎡の広々とした建物があります。

玄関を抜けてアーチ型の扉を開くと、16帖の洋室があります。足を踏み入れた時、この部屋が一番好きだなと思いました。南側の大きな窓から庭に向かってひとつづきのような空間が広がっていて、解放感があります。庭は植物で生い茂っていますが、よく見ると梅や松が植えられていることに気づきます。庭を整えれば、この広さがぐっと魅力に変わる可能性が見えてきました。

庭を眺めていると、この場所で暮らす三世代家族の様子が想像できました。場面は、天気の良い休日のお昼。
「ご飯できたよ」とお母さんが言うと、「はーい」と走ってくる小学生のお兄ちゃんと保育園児の妹。
「今日は天気がいいから、庭で食べないか」とアウトドア好きのお父さんが言う。
夏野菜の煮浸しと素麺がキャンプテーブルに並び、キャンプチェアに座って家族みんなで囲う。
「あれ、お婆ちゃんは？」と周囲を見ると、庭で育てた大葉と茗荷を収穫しながら薬味を揃えている。
そんな様子を犬のシロは嬉しそうによだれを垂らしながら見ています。

１階和室はお婆ちゃんが生活しています。窓を開ければ、南側から風が入り、畳のにおいも感じられます。和室中央にちゃぶ台を置いて、床の間に掛け軸や花生けを飾り、空間の間を大事にしています。ところが最近は、孫たちの絵や工作の作品が並び、空間も崩しながら味わうようになりました。1階和室から納戸へは、洗面室を経由するルートの他に、物入が繋がっています。この導線は子ども心をくすぐり、鬼ごっこ中の孫が通過します。

納戸には勝手口があり、外倉庫へアクセスできます。ここはお父さんのキャンプギア専用部屋と化しています。キャンプ道具や登山道具が並べられ、好きな道具に囲まれながら週末の家族イベントに備えています。

2階に上がると、6帖と８帖の洋室に加え、15帖の洋室と6帖の和室、そしてテラスが緩やかに繋がった空間があります。それぞれが自分の居場所を持ち、落ち着いて過ごす場所。家族が集まり、団欒を楽しむ場所。子どもの成長に合わせて居場所を変化させてもいいですね。どのように部屋を使い分けるかを工夫したいです。

キッチンや浴室、洗面所の水まわりは2025年3月に更新されており、水まわりの設備に対する不安は軽減されそうです。

第一種低層住宅専用地域にある為、基本は住宅としての利用が前提ですが、在宅ワークや個人の創作活動など、静かな用途での事務所利用は相談可能です。来客の多い業種やスタッフの出入りが頻繁な利用はお控えください。

十二所の静かな環境に、ゆっくりと馴染んでいける方。都会の喧騒から少し距離を取りながら、自分たちのペースを守りたい方。自然が側にあることを理解し、虫や小動物との付き合いにも覚悟のある方。思い描いていたちょうどいい暮らしは、こんな場所にあるのかもしれません。

注意事項として２点ございます。
敷地内に駐車場はございませんので、近隣月極駐車場をご自身で借りていただく必要がございます。

自然の生物による老朽化（蜂の巣、蟻の巣、鳥の巣、鼠の被害等）については、貸主は対応致しかねます。借主の費用負担により任意で駆除等を行うものとします。