お試し暮らしの家
外観は元駄菓子屋さんの雰囲気を残している 神奈川県西部の小さな町、真鶴町。
海と山の自然豊かなこの町でも近隣の箱根町などと同様に、人口減少が顕著にみられるようになった2013年に、町長からの「役場職員の中堅・若手を中心に、町のためになることをしてみましょう」という一声で真鶴町活性化プロジェクトが始動した。
その一環として、2015年に役場職員と地域の人たちが、町内にある空き家を使って真鶴町への移住・定住を推進するために、移住者を検討している人向けのお試し暮らし施設「くらしかる真鶴」を実験的に始めることに。
町の事業ではあるものの、役場職員と町の有志がセルフリノベーションで改修工事を行うところから始まった。暖房器具などの設備調達は有志から使わないものを集めた。駄菓子屋兼住宅であったこの建物、1階の通りに面した店舗部分を移住相談所に、残る住居部分をお試し暮らしスペースに改修。
立地は町の中心部にあたる商店街の中で、駅までは5分程度、港(海)へも20分程度で坂道を下れば到着する。真鶴には大手ショッピングセンターはないが、個人商店やコンビニ、スーパーがあり必要なものは徒歩圏内で手に入る。
1階旧店舗部分の移住相談所。建物が面している前面道路は地元産業である小松石を運ぶダンプが通るがこれも真鶴の日常風景。 土間スペースにはこれまでのイベントでつくられたモノたちの写真がところせましと壁に貼られている。 ここでは、移住を検討している方がこの町に住むかどうか<YES / NO>の判断を出す前に、1〜2週間生活体験をしてもらうことを目的にしている。住宅部分は128平米の5Kという間取りなので、家族でもお試しいただける。(2016年10月から正式に真鶴町が運営する施設となった。)
移住相談所のイベントでは、人の顔が見え、温度が伝わる移住を推進すべく、町が実施する町歩きイベントの地図作成などが行われ、地域住民との交流を持つことができる。町の方たちはイベント時以外にも足を運んでくれ、学校のことや地元の魚や野菜の料理をまとめたレシピの解説や、イベントで作成した切り絵による地元町人の似顔絵(?)の解説もしてくれるそう・笑。
生活体験ができる住宅部分(1階の和風な居間と広縁) 住宅部分|向かいには本屋、2階には洋室が3部屋と広いベランダがあります。 山側から真鶴港を見渡すと地形に沿った低層の建物が海に向かって並ぶ ところで、真鶴町では「美の基準」というデザインコードが町の条例で定められているのをご存知だろうか。
「美の基準」は8つの基準と69のキーワードからなり、それらすべてが数値ではなく言葉で表されている。真鶴に昔から語り継がれている町民の作法をまとめたものだが、これにより特別ではない町の風景が守られた。
結果として、真鶴にはリゾートマンションが少なく、昭和の懐かしい町並や細い路地(背戸道と呼ばれる)が残され、いたるところから海を見ることができる。ここ数年、この真鶴の美しさを求めた移住者が増え始めている。長い年月をかけて、この「美の基準」は浸透し、さらには共感する人が移住しはじめている。
素朴な生活風景の美しさをお探しの方、一度お試しください。